第21回研究報告会記録


日時:2004年12月17日(近)13:10〜17:00
会場:東洋英和女学院大学 本部・大学院棟 2F 201教室

当日のプログラムは、こちら



時系列分析(地震)と株のリスト

近藤 明良(拓殖大学)

地震の擬似波形により地震の予知を研究しました。


欠損混合分布モデルとその応用

中村 永友(札幌学院大学経済学部)
上野 玄太(統計数理研究所)
樋口 知之(統計数理研究所)
小西 貞則(九州大学大学院数理学研究院)

データ観測領域において何らかの事情である領域(区間)でデータが観測できない状況がある。この欠損は無視できない欠測である。本報告は、この欠損状況を記述する基礎モデルを示して、その妥当性を検証した。また複数の母集団分布が仮定される欠損領域を含む観測データがあり、意味のある成分分布に分ける必要がある。この目的のために、欠損状況を考慮した欠損混合分布モデルを提案し、パラメタの推定方法や欠損領域で観測されたと思われるデータ数を推定する方法を提案する。数値実験を通してモデルを検証し、プラズマ速度データへの適用を行う。


チャーノフ・フェイスによる性格プロフィールの表示

辻本 英夫(大阪市立大学)

性格プロフィールの表示法としてのチャーノフ・フェイスの有効性を検討するために、大学生194名に、チャーノフ・フェイスを構成する15の要素の各々について両極端の特徴をもつ顔図形15対を評定刺激として、性格の5因子モデルに基づく性格印象の比較評定を求めた。その結果、大半の構成要素が性格特性と結びついた印象を与えることが明らかになった。反面、性格特性をそれぞれ単一の構成要素に割り当てるだけでは、チャーノフ・フェイスによって個人の性格特徴を的確に表すことは困難であることを示唆する結果が得られた。


区間の変化量を考慮したファジィクラスタリングに基づく主成分分析

大島 純弥(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
佐藤 美佳(筑波大学大学院システム情報工学研究科)

区間データに対する主成分分析法として、vertices methodとcenters methodが提案されている。また、時間依存性を持つ主成分分析として、2つの時点間に連続的な重みを加え、重みの変化に対する固有ベクトルの変化に変動を仮定することにより変化量を算出する手法が提案されている。本研究では、ファジィクラスタリングの分類構造を用いて重みを求め主成分分析を行う手法について固有ベクトルの変化量を線形性を仮定することにより算出し、主成分得点の動的変化量を考察する。


アジア・バロメーター調査のデータ解析 −森を見るか、木を見るか−

真鍋 一史(関西学院大学)

この発表の問題関心は方法論的なものであり、取りあげるのは「アジア・バロメーター(Asia Barometer)」とよばれる国際比較調査である。まず、「アジア・バロメーター調査」の方法論的な問題について議論を進め、それにつづいて、いくつかの「探索的データの解析」の試みを紹介する。
(1) パブリック・ユーティリティ(水道・電気・ガス)の普及状況に関する分析
ここでは、L. Guttmanの開発したFacet Analysisの1つであるPOSA( Partial Order Scalogram Analysis)の技法を利用する。POSAによる分析から、各国を通じて、パブリック・ユーティリティの諸目が「一次元の尺度」を構成していることがわかる。
(2) 相関マトリック、SSA(Smallest Space Analysis)、Median Regression Analysisによる分析
A. ウェル・ビーイング(Well-being)、B. 信頼、C. 投票頻度(国政選挙・地方選挙)・投票義感・政治的シニシズムに関する分析から、一方で各国の事情が浮き彫りになってくるとともに、他方でそのような各国の特殊事情を越えたいわば一般化可能な命題ともいうべきものが導かれることになる。


緩和ケア教育の実施校の分類

宮崎貴久子(東洋英和女学院大学人間科学研究科)
斎藤 真理(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター)
林   文(東洋英和女学院大学人間科学部)

医学教育における緩和ケアの現状を検討した。医学卒後教育として、臨床研修の場となる大学病院の死亡数率は0.365であり、一般教育病院0.703の約2分の1である。よって大学病院では、患者の死にいたる過程を研修する機会が少ないといえる。卒前教育として、『医学教育カリキュラムの現状』から、緩和ケア教育を実施している大学と独立した科目の種類の関係を数量化V類を用いて分析した。緩和ケアをあげている大学は、全般的に他のプライマリケアなどの臨床科目も、独立した科目として行っていることが示された。


素朴な宗教的感情に関する一考察 −東アジア価値観調査から−

林   文(東洋英和女学院大学人間科学部)
吉野 諒三(統計数理研究所)
山岡 和枝(国立保健医療科学院)

東アジア価値観調査では、日本、韓国、台湾、香港、中国(北京、上海、昆明、杭州)において、仏教、儒教などに基づく価値観に焦点を当てた。これまでの「日本人の国民性」調査、7カ国国際比較調査などの知見から、宗教を、「信仰をもっているか」だけではなく、宗教的な心、死後の世界や霊の存在感覚、生命観、先祖や家族に対する意識などで捉えている。これらと生活満足感との関連について分析した結果、これら東アジア諸地域間で関連の仕方が異なることが示された。宗教は文化の基本であり、さらに調査分析を進めている。


技術開発の加速要因のマイニングと分類

鎌倉 修司(デシジョン・サイエンス・インスティチュート)
石塚 隆男(亜細亜大学経営学部)
西村 康一(亜細亜大学)

本研究は、技術開発ストーリーを記録した新聞記事から加速要因を抽出し、分類することを目的とする。具体的な方法として、1)記事文から「〜が・・・」の文を抽出してイベント的要因とし、2)記事中の単語概念を手段的要因・目標的要因・外乱的要因に分類し、それらの出現頻度によって当該技術開発を特徴づけている要因とした。日経産業新聞記事「技術製品化のドラマ」を対象に分析した結果、記事文章から技術ロードマップの作成や要因の視覚化が可能になった。今後は要因の分類とスコア化についてさらに精度を高める必要があろう。


新聞記事文章の構造マイニング

石塚 隆男(亜細亜大学経営学部)

本研究は、新聞記事を対象に文章の自動構造化を目的とする。具体的には、1)文を構成する単語の位置情報を用いてキーワードを抽出し、各パラグラフのラベル(見出し)付けを行い、2)各パラグラフで新規に出現した単語の割合を情報量として定義し、その変化率を用いてパラグラフのグループ化を行った。以上の機能をもち、記事文章から親和図的なブロックダイヤグラムを自動的に作成するプログラムを開発し、日本語の新聞記事に適用した結果、文章の構造化・自動図解化が可能になり、話題の転換点を検出できることが確認された。


局所距離構造を重視した多次元尺度構成法

今泉 忠(多摩大学経営情報学部)

多次元尺度構成法では、非類似度行列または類似度行列からn個のものを点として埋め込んだ布置を構成するが、混同率行列や同時想起度行列という不完全データ状況のもとで、あるものついては少数のもの間との非類似度または類似度のみに着目してモデルを想定した方が適切である場合が多い。そこで、2つのものの同時想起頻度は、対応するユークリッド空間での2点間の距離と原点からのノルムにより定まるとしてモデルを用いて視覚的な表現をも試みる多次元尺度法を提案した。従来の研究との関連を述べた後に、Rothopfのモールス信号データへの適用例についても述べた。従来のものに比べてLattice構造を浮かび上がらせていた。また、初期値依存度が低い傾向があることが伺われた。