第18回研究報告会記録


日時:2001年12月22日(土)10:00〜17:00
会場:統計数理研究所講堂
出席者:会員29名,非会員20名

当日のプログラムは,こちら



◆特別講演 シンボリック・データ解析

A Region-Based Fuzzy Pattern Classifier for Symbolic Data

市野 学(東京電機大学理工学部情報社会学科)

This paper presents a region-based fuzzy pattern classifier that is applicable to symbolic data. In Symbolic data, each sample pattern is described not only by quantitative features but also by qualitative features. To manipulate these general forms of sample patterns, we introduce a mathematical model so called the Cartesian system model (CSM). Then, we define the mutual neighborhood graph (MNG) as a tool to know the structures between pattern classes. Our region-based fuzzy classifier is designed based on the MNG. We present several numerical examples in order to show the effectiveness of our approach.


SODAS: Symbolic Official Data Analysis System −シンボリック・データ解析のためのソフトウェア−

清水 信夫(統計数理研究所調査実験解析研究系)

様々な形態の統計データを一般化して記述するための概念の一つとしてシンボリック・データ(Symbolic Data)が提案されている.これにより,大きなデータ集合をより小さなデータ表(シンボリック・データ表)に要約して記述できる.また,そのように要約されたデータ表における各個体の数学的表現はシンボリック・オブジェクトと呼ばれる.これらのデータ表およびオブジェクトの統計的な解析はシンボリック・データ解析(Symbolic Data Analysis, SDA)と呼ばれ,様々な既存の統計手法の解析対象をシンボリック・データにも拡張したものとして広く研究が進められている.
本講演では,そのようなシンボリック・データ解析を計算機上で行うためのソフトウェアであるSODAS(Symbolic Official Data Analysis System)について,インストール方法を含めた基本的な使い方および特徴を紹介する.



◆一般発表
3次元空間(乱流現象)

近藤 明良(拓殖大学)

There are 14 imaginary spheres on the Earth. The imaginary sphere will be considered in the following. Consideration is limited to one 14 spheres that exist. Of course, the size of the imaginary sphere is assumed to be the same as that of the Earth. Thus, a regular hexahedron inscribes the sphere in the interior. Due to change in the regular hexahedron, and due to the rotation of the Earth and various other Phenomena, it is considered that various events arise also on the imaginary. The Earth is thought to move 499 meters per second.
`Turbulence` is the phenomenon that has a scale comparable to human beings so that it has both deterministic aspect and random aspect.


リハビリテーション医学における障害分類の構造把握 −人工股関節置換術前後の障害像を元にして−

清水 和彦(北里大学医療衛生学部)

変形性股関節症の人工股関節置換術前後の患者284例を対象としてJOA HIP score(score)の各項目,股関節筋力,SF-36の評価を行った.scoreのα信頼性,因子分析による構成概念妥当性を確認し,構造方程式モデリング(SEM)によって障害の構造を把握した.
scoreの標準化後のα係数は0.8以上を示し,構成概念妥当性も確保されていた.「術側機能」「非術側機能」「能力障害」「身体健康面」「精神的健康面」の5潜在変数を想定したSEMの結果,身体健康面53%,精神的健康面49%,また能力障害は機能障害によって63%説明された.Scoreは疾患特異性を持つバッテリーであること,障害の階層性の仮説を支持しうるものといえた.


嗜好品とストレスの関係の日米比較

松木 修平((財)たばこ総合研究センター)

嗜好品4品目(コーヒー,紅茶,アルコール飲料,たばこ)のストレス解消効果(意 識)・摂取状況(行動)と仕事ストレスとの関係を日米間で比較・検討した.その結果, アメリカでは仕事ストレス度の高い人には社会的地位(学歴,職業,世帯年収を指標と する)の高い人が多く,そうした人々は,健康有害意識の高いコーヒーの飲用を控え, また教養がないと思われることを恐れて喫煙しない可能性が示唆された.


データの科学と統計学・データ解析・分類の方法

林 知己夫(統計数理研究所名誉教授)

Data design, data collection and data quality evaluation are crucial to data analysis if we are to draw out useful relevant information. Analysis of low-information data never bears fruit; however, data analytic methods can be refined. In spite of the importance of this issue in actual data mining and data analysis, I am forced to ask why these problems cannot be discussed at its most essential level. Perhaps it is a matter of the laborious practical work involved or the otherwise plodding pace of research. Indeed, these problems are rarely addressed because in academic circles it is regarded as unsophisticated. In the present talk, I dare to touch these problems with the fundamental concept of data science.


疲労感に関する自由回答と項目反応

土井 聖陽(大阪樟蔭女子大学短期大学部)
大隅 昇(統計数理研究所)

62名の男子大学生をサンプルとしてストレスと疲労感に関して,自由回答と質問紙を実施した.自由回答から得られた語は,「疲労」,「フラストレーション」,「攻撃性」などに分類された.「疲労」を表わした語の幾つかは,疲労を測定する質問項目と同じ言葉であった.しかしながら,両者の間のχ自乗値は有意ではなかった.さらに,「攻撃性」に関する語と攻撃性を測定する項目の表現は異なっていた.


教員志望学生の教育評価観・道徳観

吉村 宰(岡山大学教育学部)

教員志望学生の教育評価観・道徳観及び彼らの自己概念を調査した.
教育評価観,道徳観についての自由記述回答を分析し,1)多くの学生が考える教育評価の現状とあるべき姿の間にはズレがあるにも関わらず,過去に受けてきた評価には満足している,2)道徳は心の問題であり,家族や友人等自分を中心とした狭い世界観を有しているようである,などを明らかにした.また,自己概念については,自己決定感,自尊感情,能力に関する効力感が比較的高いにも関わらず,不安を感じやすい傾向にあるということを示した.これらの結果を教員養成の課題との関連で考察した.


女性の自立意識−'96年調査、'01年調査の比較をふまえて−

高倉 節子(長崎純心大学)
村田 磨理子((財)統計情報研究開発センター)

女性の自立意識について,1994年,2001年と2回の調査を行った.調査対象は,4大8校,短大5校,'58,'67,'75,'81,'86,'91,これに'01調査では,'98を加えた年度の女性卒業生であり,'94調査では,3023人,'01調査では,2500人を被調査者とし,それぞれ,1407,866の有効回答を得た.調査項目は,自立のイメージ,自立の要素・意欲・阻害要因,家族における役割意識,その他,個人的要因,社会意識などである.調査結果を分析し,経済的自立の他に,精神的自立にも重点が置かれていること,2回の調査結果は極めて類似であるが,自立意識は多少強くなった事,そして,男女についての平等性の意識がやや高くなったことなどが示された.そして,自由回答の2,3の質問に関しては,'01年の調査では,回答文がいずれも短くなっている.このことは,人々が,自立に関して,割り切って考えるようになったのではないかとも考えられる.


双対尺度法と入れ替えのアルゴリズムによる分類

中村 好宏(統計数理研究所)
馬場 康維(統計数理研究所)

質的データの解析において,変数もしくは個体の分割を必要がある場合がある.既存の質的データの解析法ではデータ構造の記述は行っても,個体または変数の分割を与えることは出来ない.
本報告では,双対尺度法と入れ替えのアルゴリズムを組み合わせた分類法を提案する.この手法は双対尺度法における等価分割の原理を基にしている.さらにこの分類法を実データに適用した例を示す.


観測値の精度を考慮した回帰分析

馬場 恵美子(日本大学理工学部数学科)
馬場 康維(統計数理研究所)

In ordinal regression analysis observed values of explanatory variables and criteria variables are considered as points. However we need to note that the points given by observation include some errors and the points given as averages are not true points. In this paper we discussed the following cases.
1) Regression analysis in the case that observed points are given as averages.
2) Regression analysis in the case that observation has errors.
In the latter case it was shown that if observation errors of a criteria variable and explanatory variables are independent then the procedure of parameter estimation of a regression plane reduces to ordinal one but it is different for polynomial regression.


Fuzzy Cluster Loadings for Weighted Regression Analysis

佐藤 美佳(筑波大学社会工学系)

ファジィクラスタリングは,現実の世界で得られる複雑なデータの状態を表現できるメリットがある.しかし,そのため,結果の解釈の困難性が従来より指摘されていた.
この問題を解決するために,ファジィクラスターの解釈を行うファジィクラスター負荷量モデルを提案する.このモデルと重み付き重回帰分析との関連性から,ファジィクラスター負荷量の推定は,重み付き回帰分析における回帰係数の推定問題として検討できる.
さらに,データが3元データである場合,二つの拡張したモデルを示す.いくつかの数値例によりこれらのモデルの妥当性を検討する.


自律的クラスタリング手法の有効性について

佐藤 義治(北海道大学大学院工学研究科)

本論文は自律的クラスタリング手法において,クラスターの形成される過程について具体的な例に基づき考察したものである.一定間隔の格子状に配置された点において,アクションルルールの異なる制御パラメータに対するクラスターの形成過程の相違点について検討した.その結果大きな特徴の一つとして,クラスターの融合は空間配置の周辺部から行われる傾向のあることが示された.これは平均の異なる正規乱数で与えられる2群のデータに対しても同様の傾向が見られた.さらに,制御パラメータを適当にとると2つのクラスターの中央に位置する点はどちらにも割り当てられず,孤立したクラスターを形成する傾向も見られた.これは従来のk-means 法とは異なる性質であり,本手法の興味あるところである.また従来の手法と比較により制御パラメータの値を決定することなどが今後の課題である.